動植物園入口

熊本市民の足として、また観光客の移動手段として重要な役割を担う熊本市電。そのB系統(上熊本駅前~健軍町)は、市中心部と東部を結び、日々の暮らしに欠かせない路線です。今回詳しく解説する「動植物園入口(どうしょくぶつえんいりぐち)」電停は、その名の通り、熊本市民に愛される憩いの場「熊本市動植物園」への最寄り電停として広く認知されています。しかし、その役割は単なる観光アクセス拠点に留まらず、水と緑豊かな江津湖(えづこ)エリアへの玄関口であり、地域住民の生活にも深く関わる停留場です。

第1章:動植物園入口電停の基本情報

名称: 動植物園入口(どうしょくぶつえんいりぐち)

所在地: 熊本県熊本市東区健軍三丁目

所属路線: 熊本市電 健軍線(B系統が運行)

電停番号: 23

構造:

相対式ホーム2面2線。道路(電車通り/県道28号熊本高森線)の中央にホームが設置されています(センターリザベーション方式)。

健軍町方面行きホーム

上熊本駅前方面行きホーム

両ホームとも、道路との間には横断歩道があり、信号機に従って通行します。

バリアフリー:

両ホームとも、スロープが設置されており、車椅子やベビーカーでのアクセスは可能です。

超低床電車「COCORO(こころ)」などの導入により、一部の電車ではホームとの段差が解消されています。ただし、全ての電車が超低床車両ではないため、乗降時に段差が生じる場合があります。

運行系統: B系統(上熊本駅前~健軍町)

A系統(田崎橋~健軍町)の電車も通過しますが、動植物園入口には停車しません。A系統利用者が動植物園入口で乗降する場合は、手前の辛島町電停などでB系統に乗り換える必要があります(乗り換え券を利用すれば追加運賃は不要)。

運行頻度: B系統は日中約10~15分間隔で運行されています。朝夕はやや増便される傾向にあります。

所要時間(目安):

熊本駅前電停から:約35~40分(辛島町での乗り換え時間含む)

辛島町電停から:約20~25分

水道町電停から:約15~20分

健軍町電停から:約5~6分

運賃: 熊本市電は全線均一運賃です(2024年現在、大人180円、小児90円)。降車時に運賃箱に現金またはICカードで支払います。

ICカード: 熊本地域振興ICカード「くまモンのIC CARD(熊本市電・バス共通)」および、全国相互利用可能な交通系ICカード(Suica, PASMO, ICOCA, SUGOCAなど10種類)が利用可能です。

第2章:歴史と沿革 – 「動物園前」から現在へ

動植物園入口電停の歴史は、熊本市電健軍線の延伸と、周辺のレクリエーション施設の整備と歩調を合わせてきました。

健軍線の延伸: 熊本市電健軍線は、戦後の1945年(昭和20年)に水前寺駅前~味噌天神前間が開通して以降、段階的に東へ延伸されました。

「動物園前」としての開業: 動植物園入口電停は、1960年(昭和35年)4月20日に健軍線が神水橋(現・神水交番前)から**動物園前(現・動植物園入口)**まで延伸された際に、終点「動物園前」として開業しました。当時の熊本市営動物園(現・熊本市動植物園)の開園に合わせて設置されたと考えられます。

健軍町までの全通: その後、健軍線はさらに延伸され、1962年(昭和37年)に現在の終点である健軍町まで全通しました。これにより、動物園前は中間電停となりました。

名称変更: 長らく「動物園前」として親しまれてきましたが、熊本市動植物園が植物園エリアも充実させた総合的な施設であることをより明確に示すため、2011年(平成23年)3月1日に現在の「動植物園入口」に改称されました。

周辺地域の変化: 開業当時は、動物園と江津湖を除けば比較的のどかな田園風景も残る地域でしたが、次第に住宅地化が進み、電車通り沿いには商業施設も増えていきました。現在では、自然と住宅地、商業施設が混在するエリアとなっています。電停は、レジャー客だけでなく、地域住民の日常的な足としても定着しています。

第3章:熊本市動植物園へのアクセス拠点

3.1 名称の由来と最寄り電停としての役割
電停名の「動植物園入口」は、文字通り**熊本市動植物園(愛称: あそBIO)**への最寄り電停であることを示しています。動物園・植物園・遊園地が一体となった複合施設であり、子供から大人まで楽しめる熊本市民の憩いの場、そして県内外からの観光客も訪れる人気のスポットです。

3.2 動植物園までのアクセス方法と距離
電停は、動植物園の**西門(正門ではない)**に最も近い位置にあります。

健軍町方面行きホームから: 横断歩道を渡り、南(電車通りと直交する方向)へ約300メートル、徒歩で約4~5分程度です。

上熊本駅前方面行きホームから: 横断歩道を渡り、同様に南へ進みます。距離・時間はほぼ同じです。

道順は比較的わかりやすいですが、「入口」という名称から「降りてすぐ目の前」を想像すると、少し歩く印象を受けるかもしれません。特に小さな子供連れや荷物が多い場合は、この距離感を事前に把握しておくと良いでしょう。

3.3 注意点

動植物園の**正門(メインゲート)**は、西門よりもさらに南東方向に位置しており、電停からは徒歩10分以上かかります。団体バスなどは正門側を利用することが多いです。

動植物園の開園時間、休園日、入園料などは事前に公式ウェブサイトで確認することをおすすめします。

土日祝日や行楽シーズン、イベント開催時などは、動植物園自体も、周辺道路や市電も混雑することが予想されます。

第4章:豊かな自然環境への入口 – 周辺施設ガイド

動植物園入口電停の魅力は、動植物園だけではありません。周辺は熊本市の貴重な水と緑の空間である**江津湖(えづこ)**エリアに隣接しており、自然散策の拠点ともなっています。

4.1 熊本市動植物園
前述の通り、電停から最も近い主要施設です。約100種500点の動物たちが飼育されている動物ゾーン、四季折々の花や緑が楽しめる植物ゾーン、観覧車などがある遊ゾーンから成り立っています。

4.2 水前寺江津湖公園(広木地区・出水地区)
電停のすぐ西側から広がる広大な都市公園です。江津湖は、熊本市中心部近くにありながら豊かな湧水に恵まれた美しい湖で、国の名勝および天然記念物(肥後藩主細川家墓所を含む)にも指定されています。

広木地区: 電停から最もアクセスしやすいエリア。芝生広場、遊具広場、水遊び場などがあり、家族連れで賑わいます。湖畔の散策路はウォーキングやジョギングにも最適です。

出水地区: 広木地区の北側に位置し、水前寺成趣園(水前寺公園)方面へ繋がります。湧水地や水路、豊かな植生が見られます。
動植物園入口電停で下車し、江津湖畔を散策したり、ピクニックを楽しんだりする人も多くいます。

4.3 熊本洋学校教師館ジェーンズ邸
電停から徒歩10分弱、動植物園西門の近くにある、明治初期の洋風建築(国指定重要文化財)。熊本の近代化に貢献したL.L.ジェーンズが暮らした邸宅で、当時の歴史に触れることができます。

4.4 商業施設・店舗
電車通り沿いを中心に、地域住民向けの店舗が並びます。

スーパーマーケット: 「鮮ど市場 南熊本店」が比較的近くにあります。

コンビニエンスストア: 電停周辺に複数あります。

飲食店: カフェ、レストラン、ラーメン店などが点在。江津湖畔にはおしゃれなカフェもあります。

その他: ベーカリー、衣料品店、ドラッグストアなど。

4.5 住宅地
電停周辺は、江津湖に近い良好な住環境を持つ住宅地が広がっています。

第5章:交通アクセス – 乗り換えと周辺道路

動植物園入口電停は、市電とバスの乗り換え地点としても利用されています。

バス停:

動植物園入口バス停(旧:動物園前バス停): 市電のホーム付近の道路脇に、熊本都市バス、産交バスのバス停が設置されています。

主なバス路線の行き先:

熊本駅、桜町バスターミナル方面: 市電と競合しますが、経由地が異なる路線もあります。

健軍・木山方面: 市電の終点である健軍町や、さらに東の木山方面へ向かう路線。

市民病院、長嶺、託麻、戸島方面: 市東部の住宅地や郊外へ向かう路線。

県庁、水前寺方面

イオンモール熊本(クレア)方面(一部路線)

熊本空港(リムジンバスの一部が経由する場合あり、要確認)

周辺道路:

県道28号熊本高森線(電車通り): 電停が設置されている主要道路。日中は交通量が多く、特に土日祝日は動植物園周辺で渋滞が発生することがあります。

周辺には江津湖公園へアクセスする道や住宅街の道路が接続しています。

駐車場・駐輪場: 電停自体には専用の駐車場・駐輪場はありません。動植物園には有料駐車場がありますが、休日は満車になることも多いです。周辺のコインパーキングは数が限られます。駐輪は、動植物園や江津湖公園の指定場所を利用するのが一般的です。

公共交通機関でのアクセスが推奨されるエリアであり、特に休日は市電の利用が便利です。

第6章:電停の設備と利用実態

ホーム設備:

両ホームとも、屋根とベンチが設置されています。標準的な市電の電停設備です。

電光掲示式の接近表示器が設置されており、電車の到着時刻や系統を確認できます。

時刻表、路線図、運賃案内、周辺案内図などが掲示されています。

利用客層:

観光客・レジャー客: 熊本市動植物園や江津湖公園を訪れる家族連れ、カップル、友人グループなど。特に土日祝日や長期休暇中に多く見られます。

地域住民: 周辺に住む人々が、通勤、通学、買い物、通院などのために利用します。江津湖へ散歩や運動に来る人も利用します。

学生: 健軍校前ほどではありませんが、周辺の学校へ通う生徒や、江津湖周辺で活動する学生などの利用も見られます。

混雑状況:

土日祝日・行楽シーズン: 動植物園の開園・閉園時間帯や、日中の時間帯を中心に、家族連れなどで混雑します。特にゴールデンウィークやお盆、動植物園でのイベント開催時などは、電車内もホームも非常に混雑することがあります。

平日: 朝夕の通勤・通学時間帯には一定の利用がありますが、日中は比較的落ち着いています。

電停の雰囲気:

休日は、子供たちの楽しそうな声が聞こえ、レジャーへ向かう人々のワクワク感が漂う明るい雰囲気です。ベビーカーを押す家族連れの姿も多く見られます。

平日は、通勤・通学客と地域住民が利用する、やや落ち着いた雰囲気となります。

江津湖に近いこともあり、緑が多く、開放的な印象を与える電停です。

第7章:動植物園入口電停の意義と特徴

動植物園入口電停は、熊本市電B系統の中でも独特の意義と特徴を持っています。

熊本を代表するレジャー施設への玄関口: 熊本市動植物園という、市民にとって最も身近で重要なレクリエーション施設への主要な公共交通アクセスを担っています。これは他の電停にはない大きな特徴です。

豊かな自然環境へのアクセスポイント: 熊本の宝とも言える江津湖の広大な自然(水前寺江津湖公園)へ直接アクセスできる電停であり、都市生活の中で自然と触れ合いたい人々にとって貴重な存在です。

観光と日常の交差点: 観光客やレジャー客が多く利用する一方で、地域住民の日常生活の足としても機能しており、観光と日常が交差するユニークな場所となっています。

環境に優しいアクセス手段: 自動車利用による周辺道路の渋滞緩和や環境負荷低減の観点からも、市電を利用して動植物園や江津湖へアクセスすることは推奨されており、その拠点としての役割は重要です。

第8章:課題と将来展望

案内表示の充実: 「入口」という名称と実際の入口までの距離について、より分かりやすい案内(地図や所要時間の明示など)がホームや周辺にあると、初めて訪れる人にとって親切かもしれません。特に正門への案内も重要です。

バリアフリーの向上: 超低床車両の完全導入や、ホームと歩道間のスムーズな動線確保など、誰もがストレスなく利用できる環境へのさらなる改善が期待されます。

混雑対策: 特に休日のピーク時の混雑緩和策として、臨時便の運行や、乗降をスムーズにするための案内・誘導体制の強化などが考えられます。

周辺エリアとの連携: 動植物園や江津湖公園、周辺のカフェなどと連携した情報発信や企画を行うことで、電停を中心としたエリア全体の魅力を高めることができます。

景観との調和: 自然豊かな江津湖エリアの入口として、電停のデザインや周辺の美観にも配慮がなされると、より魅力的な空間となるでしょう。

おわりに

熊本市電B系統の動植物園入口電停は、単に熊本市動植物園への最寄りというだけでなく、熊本の豊かな水と緑を象徴する江津湖エリアへの玄関口であり、観光客と地域住民の双方にとって重要な役割を担う停留場です。休日の賑わいと平日の落ち着き、都市の利便性と豊かな自然が共存する、熊本市電の中でも特に魅力的な場所の一つと言えるでしょう。

市電に揺られてこの電停で降り立てば、すぐそこに広がる緑豊かな公園や、動物たちの待つ空間が広がっています。環境に優しく、渋滞の心配も少ない市電を利用して、動植物園や江津湖への訪問を計画してみてはいかがでしょうか。きっと心地よい発見と、熊本ならではの豊かな時間を過ごせるはずです。

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