- 10月 28, 2024
熊本市の主要な幹線道路が交わる交通の要衝に位置し、熊本県庁へのアクセス拠点ともなる熊本市電「神水交差点(くわみずこうさてん)」電停。かつては「神水・市民病院前」として市民に親しまれたこの電停は、A系統・B系統の両方が停車し、多くの人々が利用する重要な停留場です。
1. 電停の基本情報
名称: 神水交差点(くわみずこうさてん)
旧名称: 神水・市民病院前(くわみず・しみんびょういんまえ) – 2011年3月1日改称
英語表記: Kuwamizu Kosaten
電停番号: 14
所属路線: 熊本市交通局 市電水前寺線・健軍線
水前寺線(水道町 – 味噌天神前 – 新水前寺駅前 – 水前寺公園)と健軍線(水前寺公園 – 市立体育館前 – 健軍町)の境界である水前寺公園電停の隣に位置します。書類上の所属は水前寺線とされることが多いですが、実質的には両線の接続点に近い位置づけです。
運行系統:
A系統(田崎橋・熊本駅前 – 辛島町 – 通町筋 – 水道町 – 健軍町)
B系統(上熊本 – 辛島町 – 通町筋 – 水道町 – 健軍町)
両系統が停車します。
所在地: 熊本県熊本市中央区神水一丁目・二丁目 / 東区健軍一丁目 の境界付近
国道57号線(熊本東バイパス)と熊本県道28号熊本高森線(通称:電車通り)が交差する「神水交差点」のすぐ西側、電車通りの中央分離帯部分に設置されています。
構造: 相対式ホーム2面2線
電車通りの中央に、健軍町方面行き(東向き)と熊本駅・上熊本方面行き(西向き)のホームがそれぞれ独立して設置されています。
座標: 北緯32度47分44秒 東経130度44分41秒(おおよその位置)
運賃: 熊本市電全線均一運賃(2024年6月現在:大人180円、小児90円)。
乗降時にICカードをタッチするか、降車時に現金で支払います。
隣の電停:
健軍町方面(東隣):市立体育館前 (15)
熊本駅・上熊本方面(西隣):八丁馬場 (13)
2. 電停の歴史:改称と発展
神水交差点電停の歴史は、熊本市電の延伸と、周辺環境の変化、特に市民病院の存在と移転に深く関わっています。
市電水前寺線の開通と当初の状況:
熊本市電は1924年(大正13年)に開業し、路線網を広げていきました。水前寺方面への路線(水前寺線)は1920年代後半から1930年代にかけて順次延伸されました。神水交差点付近に電停が設置された正確な時期や当初の名称については詳細な記録が待たれますが、水前寺線が水前寺公園方面へ伸びる過程で設置されたと考えられます。
「神水橋」時代?: 付近に神水橋があることから、一時期そのような名称だった可能性も指摘されていますが、公式な記録での確認は難しい状況です。
熊本市民病院の開院と「神水・市民病院前」へ:
1946年(昭和21年)、現在の電停の北側に熊本市民病院が開院しました(当初は別の場所で開院し、移転)。これにより、電停は市民病院へのアクセス拠点として重要性を増し、後に電停名も病院名を冠した「神水・市民病院前」となったと考えられます。この名称は長年にわたり市民に親しまれました。
健軍線の開通 (1945年): 水前寺公園から健軍町までの健軍線が開通し、神水地域は郊外への乗り換えなしでのアクセスが可能になりましたが、当時はA系統・B系統のような区別は明確ではありませんでした。
系統分離と両系統停車: 後の系統整理により、田崎橋・熊本駅方面へ向かうA系統と、上熊本駅方面へ向かうB系統が設定され、両系統とも水前寺線・健軍線を直通運転するため、神水・市民病院前電停は両系統が停車する主要電停となりました。
市民病院の移転と名称変更 (2011年):
熊本市民病院は施設の老朽化や機能強化のため、2019年(令和元年)10月に東区東町の東町中学校跡地へ新築移転しました。
これに先立ち、2011年(平成23年)3月1日、市民病院の移転計画が具体化する中で、電停名は実情に合わせて「神水交差点」へと変更されました。これは、電停がまさに神水交差点のすぐそばに位置することから、分かりやすさを考慮した名称です。
バリアフリー化: 近年、他の主要電停と同様に、ホームのかさ上げやスロープ設置などのバリアフリー化が進められ、超低床電車のスムーズな乗降に対応しています。
3. 運行状況:A・B両系統が交わる利便性
神水交差点電停は、熊本市電のA系統・B系統の両方が利用できる利便性の高い電停です。
停車系統:
A系統(田崎橋・熊本駅前方面 – 健軍町方面)
B系統(上熊本方面 – 健軍町方面)
主な行き先:
健軍町方面(東行き): 市立体育館前、動植物園入口、健軍校前、健軍交番前、健軍町。
熊本駅・上熊本方面(西行き): 八丁馬場、交通局前、味噌天神前、新水前寺駅前、国府、水前寺公園(※通過)、市立体育館前…という順路で健軍方面へ向かう(ただし健軍方面は東行きホーム)。西行きは、水前寺公園、九品寺交差点、水道町、通町筋、熊本城・市役所前、辛島町へ。
A系統: 辛島町から先、呉服町、祇園橋、熊本駅前、田崎橋方面へ。
B系統: 辛島町から先、洗馬橋、新町、段山町、杉塘、上熊本方面へ。
運行頻度:
A系統・B系統合わせて、日中は概ね4~6分間隔でどちらかの系統の電車が来ます。両系統が利用できるため、待ち時間は比較的短く、利便性が高いです。
ラッシュ時はさらに増便されます。
乗り換え:
A系統とB系統は、辛島町電停で乗り換えが可能です。神水交差点電停は両系統が停車するため、ここでの乗り換えは通常発生しませんが、どちらの系統に乗っても水道町・通町筋・辛島町方面へはアクセスできます。行き先(熊本駅方面か上熊本方面か)に応じて乗車する系統を選ぶ必要があります。
所要時間(目安):
健軍町:約10分
水前寺公園:約3分
水道町:約10分
通町筋:約12分
辛島町:約18分
熊本駅前(A系統):約25分
上熊本(B系統):約35分
※交通状況により変動あり。
低床車両対応:
ホームは超低床電車に対応しています。
4. 周辺施設・環境:県庁至近、交通の要衝
神水交差点電停の周辺は、官公庁、商業施設、医療機関跡地、住宅地などが混在し、熊本市の重要なエリアの一つとなっています。
ランドマーク:
神水交差点: 電停名の由来であり、国道57号(東バイパス)と県道28号(電車通り)という二つの主要幹線道路が立体交差する、熊本市東部の交通の要衝です。交通量が非常に多いです。
熊本県庁: 電停から南へ徒歩約5~7分。多くの行政機関が集まる県の中心施設です。県庁職員や県庁への来訪者にとって、神水交差点電停は最寄り電停の一つとなります(隣の市立体育館前電停も利用可能)。
熊本市民病院跡地: 電停のすぐ北側に広がる広大な敷地。2019年の病院移転後、跡地利用が検討されており、今後の開発動向が注目されています(商業施設、住宅、公園などの構想あり)。この開発内容によっては、電停の利用状況が大きく変化する可能性があります。
商業施設:
ゆめマート(旧 ニコニコドー)神水店: 電停のすぐ南側、神水交差点角にあるスーパーマーケット。地域住民の日常的な買い物に利用されています。
家電量販店(ケーズデンキ熊本本店など): 神水交差点周辺には大型家電量販店も立地しています。
飲食店: 交差点周辺や電車通り沿いには、ファミリーレストラン、カフェ、ラーメン店などのチェーン店や個人経営の飲食店が点在しています。
その他: ドラッグストア、衣料品店(しまむらなど)、各種サービス業の店舗も見られます。
公共施設:
熊本県庁舎
熊本県警察本部(県庁敷地内)
熊本武道館(県庁近く)
熊本県立図書館(県庁近く)
熊本県立劇場(隣の市立体育館前電停が最寄りだが、徒歩圏内)
医療機関:
市民病院は移転しましたが、周辺にはクリニックや歯科医院などが複数存在します。
公園・緑地:
水前寺江津湖公園(出水地区・広木地区):南西方向へ少し歩くと、広大な江津湖公園が広がっています。散策やジョギング、レジャーを楽しむことができます。
住宅地:
電停周辺は、比較的大規模なマンションやアパート、そして戸建て住宅が混在する住宅地となっています。県庁に近いこともあり、人気の住宅エリアの一つです。
道路状況:
前述の通り、国道57号と県道28号が交わる交通量の非常に多い地点です。立体交差になっていますが、平面部分での信号待ちや合流などで、特に朝夕は激しい渋滞が発生します。市電の運行もこの影響を受けることがあります。
5. 交通結節点としての機能:市電・バス・幹線道路
神水交差点電停は、複数の交通モードが交わる重要な結節点です。
バス停との接続:
電停周辺には、「神水町」バス停や**「県庁前」バス停**(少し南へ歩く)があり、多数のバス路線が発着しています。
停車するバス会社: 九州産交バス、熊本電鉄バス、熊本バス、熊本都市バスなど、主要なバス事業者が乗り入れています。
主なバス路線:
市内中心部(桜町バスターミナル、通町筋、熊本駅など)方面
郊外方面(益城町・木山、御船、甲佐、松橋、光の森、武蔵ヶ丘など)
熊本空港(リムジンバス・一般路線バス)
熊本赤十字病院、済生会熊本病院など、主要な医療機関方面
乗り換え: 市電とバスを乗り継ぐことで、熊本市内および郊外の広範囲なエリアへアクセス可能です。特に、空港方面や市東部・南部の市電が通っていない地域への移動にバス乗り換えが有効です。ICカードによる乗り継ぎ割引も活用できます。
主要幹線道路の交点:
国道57号(東バイパス)と県道28号(電車通り)が交わるため、自家用車でのアクセスも多いエリアです。ただし、周辺の駐車場は限られている場合があり、渋滞も頻発します。公共交通機関の利用が推奨されるエリアとも言えます。
タクシー: 電車通りや国道沿いでタクシーを拾いやすい環境です。
駐輪場: 電停自体に駐輪場はありませんが、周辺の商業施設などに付帯する駐輪スペースがある場合があります。
6. 利用状況:多様な人々が行き交う
両系統が停車し、主要な施設や幹線道路に近いことから、神水交差点電停は終日多くの人々が利用しています。
主な利用者層:
通勤・通学者: 市内中心部や健軍方面へ向かう人々、周辺の事業所や学校へ通う人々。県庁職員の利用も多いと考えられます。
県庁・周辺施設利用者: 県庁や県立図書館、武道館などへの用務客や訪問者。
バス乗り換え客: 市電とバスを乗り継ぐ人々。
地域住民: 周辺に住む人々の日常的な移動。
買い物客: ゆめマートや周辺の商業施設を利用する人々。
乗降客数の傾向:
熊本市電の中でも乗降客数の多い主要な電停の一つです。A・B両系統が停車するため、乗り降りともに利用者が多いです。
朝夕の通勤・通学ラッシュ時は特に混雑します。
昼間も県庁への訪問者や買い物客などで、比較的利用者は多いです。
電停の雰囲気:
交通量の多い幹線道路に挟まれているため、常に車の音があり、やや騒々しい雰囲気です。
通勤・通学時間帯は多くの人が行き交い、バスへの乗り換えなどで足早に移動する姿が見られます。昼間は比較的落ち着きますが、人の流れは絶えません。
7. 電停の設備とバリアフリー
利用者の利便性と安全性を考慮した設備が導入されています。
ホーム構造:
標準的な相対式ホーム。幅はそれなりにありますが、ラッシュ時は混雑します。
上屋(屋根): ホームの大部分を覆う屋根が設置されており、雨天時でも濡れにくい構造です。
ベンチ: 待合用のベンチが設置されています。
案内表示: 電停名、時刻表、路線図、運賃表、乗り換え案内などが分かりやすく表示されています。電光掲示板による接近案内もあります。
バリアフリー対応:
ホームかさ上げ・スロープ: 超低床電車に対応したかさ上げと、車道からホームへのスロープが整備されており、車椅子やベビーカーでもアクセスしやすくなっています。
点字ブロック: 設置されています。
安全対策:
ホームドアはありません。交通量が非常に多い道路の中央にあるため、ホームでの待機時、特に子供連れの場合は注意が必要です。
電車通りを横断する際は、必ず信号のある横断歩道を利用し、左右の安全を十分に確認してください。特に交差点付近は車の動きが複雑なため注意が必要です。
8. 健軍線・B系統における位置づけ
神水交差点電停は、路線網の中で複数の役割を担っています。
A/B系統の合流・分岐点手前: 水道町方面から来たA・B両系統が、この先健軍方面へ共通の線路を走る、実質的な合流点の手前にあたります(系統上の分岐点は辛島町)。利用者にとっては、どちらの系統に乗っても市内中心部へアクセスできる最後の(あるいは最初の)電停の一つです。
県庁へのアクセス拠点: 熊本県庁への最寄り電停の一つとして、行政機能へのアクセスを支えています。
主要幹線道路との接続: 国道57号(東バイパス)との交点に位置し、車社会との接点ともなっています。
バスネットワークとの連携: 多数のバス路線との乗り換えが可能であり、市電ネットワークを補完し、広域的な移動を可能にする結節点として機能しています。
9. 利用する上でのTips、注意点
行き先の確認: 西行きホーム(熊本駅・上熊本方面)では、A系統(田崎橋・熊本駅前方面)とB系統(上熊本方面)の両方が来ます。自分の目的地に合わせて、電車の行き先表示や車体側面の系統表示をよく確認して乗車しましょう。
バス乗り換え: 利用したいバス路線の乗り場(「神水町」か「県庁前」か、さらにどちら方面の乗り場か)と時刻を事前に調べておきましょう。バス停は電停から少し歩く場合があります。
交差点横断: 電停へのアクセス、電停からの移動には、交通量の非常に多い神水交差点を横断する必要があります。歩行者用信号を必ず守り、青信号でも左右の安全、特に左折・右折車に十分注意してください。
騒音: 主要幹線道路の交差点に位置するため、車の騒音は大きめです。
旧名称との混同: タクシー運転手や古くからの住民には、旧名称の「神水・市民病院前」の方が通じやすい場合もまだあるかもしれません。
10. 今後の展望・課題
交通の要衝である神水交差点電停は、今後も重要な役割を担いますが、変化も予想されます。
市民病院跡地開発: 最大の注目点は市民病院跡地の再開発です。ここにどのような施設ができるかによって、電停の利用者層や乗降客数が大きく変化する可能性があります。商業施設ができれば買い物客が増え、大規模な住宅ができれば通勤・通学利用者が増えるでしょう。開発計画と連携した電停機能の向上が期待されます。
交通渋滞対策: 神水交差点周辺の慢性的な交通渋滞は、市電の定時運行にも影響を与えます。信号制御の最適化や公共交通優先策など、渋滞緩和に向けた取り組みが課題です。
乗り換え利便性の向上: バス停との連携強化(案内表示の充実、屋根付き通路の設置検討など)により、乗り換えの利便性をさらに高めることが望まれます。
LRT化構想: 熊本市が進めるLRT化構想の中で、神水交差点付近の線形改良や、よりスムーズな運行を実現するためのインフラ整備が検討される可能性があります。
結び
熊本市電「神水交差点」電停は、A・B両系統が停車し、熊本県庁や主要幹線道路に近接する、利便性の高い電停です。かつての「神水・市民病院前」から名称が変わり、市民病院跡地の再開発という新たな動きも控える中、熊本市東部の交通結節点として、そして地域の生活と発展を支える拠点として、今後もその重要性は増していくことでしょう。利用する際は、交通量の多さに十分注意し、市電とバス、そして周辺施設を賢く活用してください。