- 10月 28, 2024
1. 「水族館口」停留場とは? – 鹿児島の海の玄関口を結ぶ電停
鹿児島市電2系統が走る路線上、ひときわ観光客の利用が目立ち、港町の風情を感じさせる停留場が「水族館口(すいぞくかんぐち)」です。その名の通り、鹿児島の人気観光スポット「いおワールドかごしま水族館」の最寄り電停であり、また雄大な桜島へ渡る桜島フェリーターミナルへも至近であることから、鹿児島の海の玄関口としての重要な役割を担っています。
この停留場は、鹿児島市の中心市街地と港湾エリアを結ぶ結節点に位置し、地元住民の日常的な足としてだけでなく、国内外からの多くの観光客が利用する、活気あふれる場所です。レトロな路面電車が走り抜ける風景と、目の前に広がる錦江湾、そして雄大な桜島の姿が相まって、旅情をかき立てる独特の雰囲気を持っています。
元々は「市役所西」という名称でしたが、1997年の「いおワールドかごしま水族館」開館に合わせて現在の名称に変更され、その役割がより明確になりました。本稿では、この「水族館口」停留場について、その基本情報から歴史、構造、周辺情報、利用状況、そして今後の展望に至るまで、多角的に詳しく解説していきます。
2. 基本情報
所在地: 鹿児島県鹿児島市易居町(いやす居ちょう)付近
郡元方面行きホーム:易居町と本港新町(ほんこうしんまち)の境界付近、市道本港線の中央分離帯上
鹿児島駅前方面行きホーム:易居町、市道本港線の中央分離帯上
所属路線: 鹿児島市交通局(鹿児島市電)第一期線
※ただし、運行系統としては主に**2系統(鹿児島駅前 – 郡元)**が使用します。1系統(鹿児島駅前 – 谷山)はここを通りません。
停留場番号: I03 (I: 第一期線・伊敷線系統)
構造: 相対式ホーム2面2線
道路(市道本港線)の中央に、上下線それぞれ独立したホームが設置されています。
隣の停留場:
鹿児島駅前方面:桜島桟橋通 (I02)
郡元方面:市役所前 (I04)
運賃:
大人:190円(小児:90円)の均一運賃制(2024年時点)
支払い方法:
現金(降車時)
ICカード「RapiCa(ラピカ)」(乗車時・降車時にタッチ)
全国相互利用交通系ICカード(Suica, PASMO, ICOCAなど)(乗車時・降車時にタッチ)
クレジットカード等のタッチ決済(Visa, JCB, American Express, Diners Club, Discover, 銀聯)(降車時にタッチ)
一日乗車券、二日乗車券など
3. 歴史:時代の変化を見つめてきた停留場
「水族館口」停留場の歴史は、鹿児島市電の発展と、鹿児島港周辺エリアの変遷と深く結びついています。
前身「市役所西」の開設:
現在の「水族館口」停留場は、もともと**「市役所西」**という名称で開設されました。正確な開設年月日は資料によって若干の差異が見られる可能性がありますが、鹿児島市電の第一期線が延伸していく過程、昭和初期から中期にかけての時期に設置されたと考えられます。当時の名称が示す通り、鹿児島市役所本庁舎へのアクセスを考慮した位置づけでした。
軌道敷設と周辺の発展:
この周辺の軌道は、鹿児島市の都市交通網の整備とともに敷設されました。路面電車は市民の重要な足として、通勤・通学、買い物などに利用され、停留場周辺も市役所や港湾関連施設を中心に発展していきました。かつては貨物輸送なども行われていた時代もあり、港に近いこのエリアは物流の拠点としても機能していました。
「水族館口」への改称:
大きな転機となったのは、1997年(平成9年)5月30日の**「いおワールドかごしま水族館」の開館です。水族館の開業に合わせ、最寄り停留場である「市役所西」は「水族館口」**へと改称されました。これにより、停留場の役割は市役所へのアクセス拠点から、主要観光施設への玄関口へと大きくシフトし、その存在意義がより明確になりました。この改称は、鹿児島市のウォーターフロント開発の一環であり、観光客にとっての分かりやすさを向上させる目的もありました。
時代の変化とともに:
改称後も、停留場は時代の変化を見つめてきました。周辺にはドルフィンポート(2020年閉館)が開業し、ウォーターフロントエリアの賑わいを創出しました。また、近年ではキャッシュレス決済の導入や低床車両の導入など、利便性向上への取り組みが進められています。バリアフリー化への対応も徐々に進められていますが、古い構造を残す部分もあり、継続的な改善が求められています。
4. 停留場の構造と設備:港町の風景に溶け込むシンプルな姿
「水族館口」停留場は、道路の中央に設けられた典型的な路面電車の停留場の構造をしています。
ホーム:
形状: 郡元方面行き、鹿児島駅前方面行き、それぞれ独立した相対式ホームです。ホームの長さは、鹿児島市電の標準的な車両(単車または連接車)1~2両分程度が停車できる長さです。幅はやや狭く、特にラッシュ時や観光シーズンには混雑することがあります。ホームの高さは、従来型の高床車両に合わせて作られていますが、近年導入が進む低床車両(ユートラムシリーズ)にも対応できるよう、一部に嵩上げされた箇所やスロープが設けられています。
上屋(屋根): 各ホームには、一部区間に上屋が設置されており、雨や強い日差しを避けることができます。構造は比較的シンプルな金属製のものが多く、港町の風景に溶け込むデザインです。上屋の長さはホーム全体を覆うものではなく、乗車位置によっては濡れることもあります。
ベンチ: 各ホームには、数人掛けのベンチが設置されており、電車を待つ間に休憩することができます。シンプルなデザインのものが多く、利用者が多い時間帯には埋まっていることもあります。
安全設備: ホーム端には落下防止のための安全柵が設置されています。視覚障がい者向けの点字ブロックもホーム上に敷設されています。
床材: アスファルト舗装またはコンクリート舗装が基本ですが、乗降口付近など、滑りにくい素材が使われている場合もあります。
案内表示:
停留場名標識: ホーム上屋の柱や側面、あるいはホーム端に設置されています。鹿児島市電標準のデザインで、停留場名(ひらがな・漢字・ローマ字)、停留場番号(I03)、隣の停留場名などが記載されています。水族館の最寄りであることを示す案内が付記されている場合もあります。
時刻表: ホーム上屋の柱や壁面に掲示されています。平日・土日祝日別の時刻が記載されていますが、路面電車は道路状況の影響を受けやすいため、あくまで目安となります。
路線図・運賃表: 鹿児島市電全体の路線図や、均一運賃であること、支払い方法などが案内されています。
周辺案内図: 水族館や桜島フェリーターミナル、市役所、バス停などへの方向を示す案内図が設置されています。観光客にとっては重要な情報源です。
接近表示器: 近年、鹿児島市電の主要停留場には、電車の接近状況を知らせる電光掲示板やLCDディスプレイが設置される例が増えています。水族館口にも設置されており、「次の電車」「その次の電車」の接近情報や行き先、遅延情報などを確認できます。多言語表示(英語など)に対応している場合もあります。
バリアフリー:
ホームへのアクセス: 停留場は道路の中央にあるため、横断歩道を渡ってアクセスします。交差点の信号や横断歩道の整備状況は、バリアフリーの観点からも重要です。
ホーム上の段差: 低床車両に対応するため、一部嵩上げやスロープ設置が行われていますが、ホーム全体が完全にフラット化されているわけではありません。車椅子やベビーカー利用者は、低床車両の乗降口付近で待機するのがスムーズです。
点字ブロック: ホーム上には設置されていますが、停留場へのアクセス経路(横断歩道など)を含めた総合的なバリアフリー化は今後の課題とも言えます。
音声案内: 車両側では次の停留場案内などが行われますが、停留場設備としての常設音声案内は限定的です。
その他設備:
照明設備: 夜間でも安全に利用できるよう、ホーム上屋や周辺に照明が設置されています。
ゴミ箱: 基本的にホーム上には設置されていません。ゴミは持ち帰るのがマナーです。
広告: ホームの壁面などに、周辺施設や企業の広告が掲示されていることがあります。
5. 運行状況と時刻表:2系統が結ぶ鹿児島の南北
「水族館口」停留場には、鹿児島市電2系統が停車します。
運行系統: 2系統(鹿児島駅前 – 郡元)
鹿児島駅前から、市役所前、天文館通、高見馬場(ここで1系統と分岐)、加治屋町、鹿児島中央駅前などを経由し、郡元へ至る系統です。鹿児島市の主要な拠点間を結んでいます。
運行頻度:
ピーク時(朝夕ラッシュ時): 約5~7分間隔程度で運行され、通勤・通学客で賑わいます。
日中: 約7~10分間隔程度で運行されています。
早朝・深夜: 運行間隔は長くなります。
※イベント開催時などは臨時便が運行されることもあります。
始発・終電 (目安):
郡元方面: 6時台前半 ~ 23時頃
鹿児島駅前方面: 6時台前半 ~ 23時頃
※正確な時刻は必ず鹿児島市交通局の公式ウェブサイトや時刻表でご確認ください。
所要時間 (目安): 道路状況により変動します。
鹿児島駅前まで: 約5分
市役所前まで: 約2分
天文館通まで: 約8~10分
鹿児島中央駅前まで: 約15~20分
郡元まで: 約30~35分
乗換情報:
桜島フェリー: 停留場から桜島フェリーターミナルまで徒歩約5分。桜島へ渡る際の重要な乗り換え地点です。
市バス・各社バス: 停留場周辺(市役所前、水族館前など)にバス停が点在しています。行き先に応じて適切なバス停を利用する必要があります。市電とバスの乗り継ぎ割引(RapiCa利用時など)もあります。
他の市電系統: 2系統のみの停車であるため、1系統(谷山方面)へ乗り換える場合は、高見馬場などの乗換電停を利用する必要があります。
6. 周辺情報とアクセス:観光と行政の中心地
「水族館口」停留場は、鹿児島の魅力を凝縮したエリアへのアクセス拠点です。
主要施設:
いおワールドかごしま水族館: 停留場の名前の由来であり、最大の目的地。ジンベエザメやイルカなどが人気。停留場からは横断歩道を渡ってすぐ、徒歩約1~2分です。
桜島フェリーターミナル: 鹿児島港本港区にある桜島への玄関口。24時間運航で、多くの観光客や地元住民が利用します。停留場から東へ徒歩約5分。
ドルフィンポート跡地: かつて商業施設があった場所。現在は更地となり、新たなスタジアム建設を含む再開発計画が進められています。将来的にこのエリアの人の流れを大きく変える可能性があります。停留場のすぐ南側に位置します。
ウォーターフロントパーク(かんまちあ連絡線マリンポートかごしま): ドルフィンポート跡地に隣接する緑地公園。イベントスペースとしても利用され、様々な催しが行われます。
鹿児島市役所: 本庁舎へは隣の「市役所前」が最寄りですが、みなと大通り別館など一部の庁舎へは水族館口からもアクセス可能です。
NHK鹿児島放送局: 停留場の西側に位置します。
鹿児島地方合同庁舎: 税務署や法務局などが入居。
ホテル・商業施設: 周辺には複数のホテル(レム鹿児島、ホテルマイステイズ鹿児島天文館などへも徒歩圏内)や、小規模な飲食店、土産物店などが点在しています。
バス停:
「水族館前」バス停: 停留場のすぐ近くにあり、鹿児島市営バスや鹿児島交通、南国交通などが発着。市内各方面や空港連絡バス(一部)などが利用できます。
「市役所前」バス停: 隣の市役所前電停付近にあり、より多くの路線が利用可能です。
「桜島桟橋」バス停: フェリーターミナル付近にあり、こちらも多くの路線が発着します。
道路: 停留場が設置されているのは市道本港線です。交通量は時間帯によって多く、特に朝夕は混雑が見られます。路面電車と一般車両、バス、歩行者が交錯するため、安全確認が重要です。周辺には国道10号線なども通っています。
景観: ホームからは、進行方向によって錦江湾(鹿児島湾)と、その向こうにそびえる桜島の雄大な姿を間近に望むことができます。特に桜島フェリーが行き交う様子や、晴れた日の青い海と空、桜島のコントラストは、鹿児島らしい開放的な風景です。
7. 利用状況:観光客と地元利用者が交わる場所
「水族館口」停留場は、その立地から多様な利用者が行き交う場所です。
乗降客数: 正確な停留場別データは公表されていませんが、いおワールドかごしま水族館や桜島フェリーへのアクセス拠点であることから、鹿児島市電の中でも乗降客数は比較的多い部類に入ると推測されます。
利用パターン:
平日: 朝夕は市役所や合同庁舎などへ向かう通勤客、日中は水族館や桜島へ向かう観光客、周辺住民の利用が中心です。
休日・観光シーズン: 観光客の割合が大幅に増加し、終日賑わいを見せます。特に大型連休や夏休み期間中は、水族館や桜島フェリー利用客でホームが混雑することがあります。キャリーケースを持った旅行者の姿も多く見られます。
イベント開催時: ウォーターフロントパークなどで大規模なイベントが開催される際は、一時的に利用者が急増します。
利用目的:
観光: いおワールドかごしま水族館、桜島観光が圧倒的多数。
通勤・通学: 市役所、合同庁舎、周辺企業への通勤、近隣学校への通学。
日常利用: 周辺住民の買い物や移動手段として。
8. 停留場の特徴・魅力・課題
「水族館口」停留場には、その立地ならではの特徴と、利便性の裏にある課題が存在します。
魅力:
抜群の観光アクセス: いおワールドかごしま水族館、桜島フェリーターミナルという鹿児島の二大観光スポットに極めて近い。
景観の良さ: ホームから望む桜島と錦江湾の景色は格別。
分かりやすさ: 停留場名が目的地を明確に示しており、初めて訪れる観光客にも分かりやすい。
交通の結節点: 路面電車、バス、フェリーといった異なる交通手段への乗り換えが比較的容易。
課題:
混雑: 観光シーズンやイベント時のホーム、車内の混雑。特に大きな荷物を持った観光客が多い場合、乗降に時間がかかることも。
バリアフリー: ホームと道路の間のアクセス、ホーム上の完全なフラット化など、さらなる改善が望まれる点もあります。低床車両の運行比率向上も重要です。
天候の影響: 屋根のない部分では、雨天時や夏場の強い日差しの中で待つ必要がある。
安全性: 道路中央に位置するため、停留場へのアクセス時の車両との接触事故リスク。特に交通量が多い時間帯は注意が必要。
9. 今後の展望:変化するウォーターフロントの中心として
「水族館口」停留場は、今後も鹿児島市の重要な交通拠点であり続けると考えられますが、周辺環境の変化とともにその役割も変化していく可能性があります。
ドルフィンポート跡地の再開発: 現在計画が進むサッカースタジアムを中心とした再開発は、完成すればこのエリアに新たな人の流れを生み出し、「水族館口」停留場の利用者層や利用パターンに大きな影響を与える可能性があります。イベント開催時のアクセス手段としての重要性がさらに増すでしょう。
バリアフリー化の推進: 鹿児島市電全体で進められているバリアフリー化の一環として、ホームの改修や周辺アクセス経路の改善が今後も継続されることが期待されます。
観光客増加への対応: インバウンドを含む観光客のさらなる増加を見据え、多言語対応の強化、案内表示の改善、混雑緩和策(車両増結や臨時便など)が求められる可能性があります。
キャッシュレス決済のさらなる拡充: クレジットカードタッチ決済などが導入されましたが、さらなる利便性向上が図られる可能性があります。
LRT(次世代型路面電車システム)化構想: 鹿児島市では、市電のLRT化や延伸に関する議論があります。もし将来的に路線延伸や新型車両導入などが具体化すれば、「水族館口」を含む既存区間のサービスも向上する可能性があります。
10. まとめ:「水族館口」から広がる鹿児島の魅力
鹿児島市電2系統「水族館口」停留場は、単なる路面電車の通過点ではありません。それは、鹿児島の豊かな自然と活気を象徴する「いおワールドかごしま水族館」と、雄大な「桜島」への扉を開く、重要な場所です。歴史を重ねながら、「市役所西」から「水族館口」へとその名を変え、時代のニーズに応えながら多くの人々を迎え入れてきました。
ホームから望む桜島と錦江湾の景色は、訪れる人々の心に深く刻まれるでしょう。周辺の再開発が進む中で、この停留場は今後さらにその重要性を増していくと考えられます。
利用する際は、特に観光シーズンやイベント時の混雑に留意し、時間に余裕を持つことが大切です。また、道路中央にあるため、周囲の交通に十分注意して安全に利用しましょう。キャッシュレス決済や一日乗車券などを活用すれば、より快適に市電の旅を楽しめます。
「水族館口」停留場は、鹿児島の海と街、そして桜島を結ぶ、旅の始まりと終わりの記憶に残る場所となるはずです。ここから始まる鹿児島の魅力を、ぜひ満喫してください。
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